さくらが咲いたよ
さくらが咲いたよ
薄紅花街
峠に咲いたよ 遠く鐘が鳴る
男はダンビラはためかせ 女のため今宵も首を取る
愛しては果てのない孤独ばかり
さくらが咲いたよ
朧春霞 恋しや都と鳥が啜り泣く
男は不安に荒れ狂う 女があまりに美しすぎて
満開の花の下の恐さに似て
さくらが咲いたよ
地獄獣路 命惜しかろと屍が嗤う
さくらが揺れるよ
風さえないのに はらはら零れた血染めの簪
咲き乱れ 舞い遊び 手のひらが花になる
愛惜しや 恨めしやその胸を殺めたい
咲き狂い 舞い堕ちてこの躯 風になる
花びらが散るたびに 人命が散っていく
さくらが咲いたよ
この世を埋めて
さくらが散ったよ
あとは何もない